一つの手段と前提

森田敦史です。

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

今年一発目のテーマは“前提”です。一つの手段も前提が違えば、意味合いも違う。来院する人の前提と治療する側の前提は必ずしも一致しているわけではなく、この前提の摺合せがないとその取組みが無駄になってしまうという重要なポイントです。

あなたは健康増進の為に“ジョギング”を1km10分ペースで毎日30分する。

これに違和感を覚える人は多くないと思います。

あなたはフルマラソンで完走するために“ジョギング”を1km10分ペースで毎日30分する。

これに違和感を感じる方は多いのではないですか?

前の方はいいでしょう。1km10分というとちょっと早歩き程度のスピード、時間も有酸素運動として30分、健康増進が目的であれば自然かと・・・。でも後者は、明らかに足りません。初めの段階としていいかもしれませんが、徐々にスピード・時間・インターバルなど様々なトレーニングをやっておいた方がフルマラソン完走には近くなります。

ここでは“健康増進の為”、“フルマラソン完走の為”というのが“前提”です。

この“前提”によって同じ行為でも意味合いがかなり変わってくる現実があります。例えば、あなたはフルマラソン完走の為、できれば目標タイムもクリアしたいという希望でトレーニングコーチの元で指導を受けます。しかし、トレーニングコーチの活動理念が健康増進であり、競技的な意味合いがない場合、現実的には最初の段階であなたが気づくとは思いますが、万が一そうならずに指導を受けた場合、結果はどうなるでしょう?

一番困ってしまうのは、フルマラソンで完走しようと思っている人間が、1km10分ペースで毎日30分ジョギングすればOKという認識を持ってしまうことです。

こんなわかりやすい例だと間違える人は少ないと思いますが、そういう前提の違いを理解しているかどうかという話です。

私達の仕事風に言えば、

“癒されたいから揉みほぐしを受ける”

“腰の椎間板フルニアを治したいから揉みほぐしを受ける”

前者は特段違和感はありません、後者はちょっと違います。揉みほぐしでも場合によって改善しない事はないのですが、おそらく違和感を感じるはずです。何らかの治療が必要と思うはずです。

もう一つ、

“強靭な肉体を手に入れたいから筋力トレーニングをする”

“強靭な肉体を手に入れたいから整体施術を受ける”

やはり後者に違和感を感じませんか?強靭な肉体を手に入れるのであれば一般的には筋力トレーニングがイメージに合いそうです。

さて本題に、

“生活習慣からくる慢性肩凝りの根本的な原因(体質)を改善したいから日常含めて動きの癖を変える”

“生活習慣からくる慢性肩凝りの根本的な原因(体質)を改善したいから整体施術を受ける”

ここまでくるとちょっと微妙になってきます。

前提は、根本的な原因の改善ということです。

整体院などのホームページをみれば、この“根本原因”という文字は本当にたくさん見られます。

その中の多くは、骨盤であったり、姿勢であったり、ようは形を問題にしています。でも、根本原因というのは、文字通り根本なのですから、根本でないといけません。(当たり前ですね)

骨盤の歪みや姿勢もそうですが、これはどう考えても結果です。

なぜそのように骨盤がゆがんでしまったのか?

なぜそんな姿勢になってしまったのか?

なぜ肩凝りを感じるほどに強い緊張が出てしまったのか?

明らかに日常での動きの習性の結果、もっと言えばその人の精神が動きの習性に大きな影響を及ぼします、根本というからには少なくとも、そこまで言及しなければ変です。

ここでの前提は、根本的な原因(体質)を改善したい、という部分です。

不幸なのは、根本的な原因(体質)を改善したいのに、整体施術しか受けないことです。とりあえず苦痛を楽にしてほしい、もしくはあまりにも重症で自分でどうこうできるレベルではないのでまずは整体施術を受ける、という認識の基で受けていれば問題ありません。

しかし、生活習慣からくる慢性的な不調の多くは、というよりもほとんどは、その原因は他者に丸投げして良い不可抗力的なものではなく、自分自身での修正も必要で責任もあるというものだという認識が大切です。

ほとんどの場合は、今の症状を改善したい&根本的に改善したい、というセットの前提であると推測はできます。

ここで認識しなければならないのは、施術は症状改善には役立つ、しかし施術を受けるだけでは絶対に健康にはなれないという考え方になります。

施術主体の治療院に通う場合やそういった治療を受ける場合は、この点を認識したうえで通う必要があります。

話が脱線してしまいましたが、施術というのは症状改善という前提の基ではかなり有効、体質改善という前提の基では微妙、というか別の取組みも必要というのが私の考え方です。この前提の認識と理解は自分の選択を無駄にしないために大事です、そもそも、本来この辺は治療院側から発信すべきだと考えますが・・・。

前提で言うと私はどちらかと言うと担当している障がいの傾向もありますが体質改善的治療が主です、愛子先生は症状改善と体質改善を両立させている治療をやっています。

当院においては、どちらの前提も健康に関連しますし、どちらの前提で来られてもOKなように、治療やヨガ、各種プログラム等を準備しているという訳です。

体質改善という前提でお話しますと、頚の解放&骨盤強化、歩き、呼吸、所作。ここを抑えておくことは極めて重要だと思います。言い換えると、

  1.  人間の要である頚と腹に関して、
  2.  毎日7500歩という数の歩くという運動に関して、
  3.  生きている以上は絶対に避けて通れない呼吸に関して、
  4.  様々なところで“動く”人間の大・中・小の動き方に関して、

こういう事をしっかり抑えておくと健康体構築において絶対に得であると断言できます。