動力の方向性~ちょっと専門家向け~

 こんばんは、森田敦史です。ちょっと専門家向けの内容です。

 今回は、脳性麻痺(重度)の治療に関してちょっと・・・

 脳性麻痺と一般の患者さんの治療は原則として同じです。最も重視しているのは身体内部の動力の方向性ですね。

 脳性麻痺の場合、最も心配される問題の一つに脊柱側湾があります。これは、身体の動力の方向性がかなり大きな要素として関係してきます。

 脳性麻痺の側湾は、病的なものというよりも多くが自然発生的に起きています。自然というのは、ある一つの動作を完成させるために身体を一方向性に使う、ということです。

 例えば、脳性麻痺で右手が使いやすい場合は、右手をより安定した状態で使うために身体の様々な部分を使い、右手を使う条件を整えていくのです。

 一方向性の身体動作は、動きの癖ですので、それが年単位で蓄積されると側湾という形・表現体として完成されます。

 特に中学生から高校生にかけての成長期では、成長に伴って、動きの癖が強調されてきます。多くの場合、側湾が進行するのは、中学生~高校生です。

 また、体軸法では、身体はその人の生き方そのものであるという事を常に言っていますが、脳性麻痺において、側湾が出る患者さんは精神的な、性格的な共通点がみられます。

 その性格上の特性が、一方向性の動作を強調させることによって、側湾が顕著に出現するものと考えられます。

 脳性麻痺の治療に際に注意すべき点は、まずは身体の動力の方向性、動作の癖のパターンを的確に把握することにあります。

 把握することができると、次にその動力の方向性を変える事が求められます。身体内部の動力の方向性が表現体・姿勢の大元ですので、動力の方向性をちょっとでも変化させると表現体も当然変化してきます。

 これは通常の患者さんにも同様に当てはまります。その患者さんの動きの癖、つまり動力の方向性をどこまで正確に読めるかが鍵となってきます。

 脳性麻痺の場合は、あえて緊張を出すという事も治療の中では必要になってきます。

 他からみるとただ、一緒に動いて戯れているようにみえても、時間と共に動力の方向性が変化し、緊張が緩み、姿勢・表現体も変化してきます。

 動力の方向性を変える場合、大切なのは、動作のなかで、どこの動きを止めて、どこの動きを解放させるか、それによって動きの方向性が限定されます。

 その状態で緊張をあえて出させると、自分が出したい方向へと動いていくわですね。

 プラスして、性格上の特性も考慮しなければなりません。可能であるならば、意識教育も同時平行して行い、人間としての成長を促す事ができるとより好転するものと考えています。

 治療は、観察力がかなり重要となります。その人の不都合の原因となる動きをいかに読み込めるかが、腕の見せ所になると思います。

 情報提供:渋谷鍼灸理学治療室 体軸法 渋谷 森田敦史