軸側と移動側

 人間を大きく2つに左右に割ると、軸側と移動側が存在します。

 簡単に言うと、右足と左足、どちらが出しやすいかということになります。右足を出しやすい場合は、右が移動側、左は軸側ということになります。

 軸側は言い換えれば重心側(荷重側)になり、軸であるために、軸であらねばならぬために、軸側の筋肉は緊張傾向にあり、関節の可動範囲は狭いのです。

 これは自然の変化であり、軸というのは、移動側の安定的かつスムーズな移動のために、固定という役割を持っています。

 軸側は固定側でもあるためにやわらかく・自在では困りますので、筋肉は緊張傾向・関節の可動範囲は狭いということになります。

 対して、移動側はスムーズに、自在性を持って動く側であるために筋肉はしなやかに、関節の可動範囲は広くなっています。移動側がかたいと動きは制限されてしまうためです。

 人間には、このように軸側と移動側が存在し、その影響を多くの方は無意識的に受けています。

 このような特性があるために、人間は無意識的に、軸側で軸を作ろうとし、移動側は常に動けるようなポジションを探します。

 例えば、腕組み・足組み・立膝など様々なシーンでこの特性の影響が出ます。そのため、その人の姿勢や動きをみると軸側と移動側がよくわかります。

 軸側を常に軸にして動くとスムーズになり、移動側を軸にしてしまうと動きは窮屈でぎこちなくなります。身体運動の際には、この軸側と移動側の特性を理解したうえで、動作に入ると、合理的な動きができます。

 但し、許容範囲を超えた場合は、身体に不調をきたす原因にもなります。

 体軸法でいう、中心軸を作るというのは、この軸側と移動側を限りなくニュートラルに近づけるという意味を持っています。そして、軸側と移動側をニュートラルに近づけるためには、手指・首・腹などの力みを修正し、かつ身体の位置感覚を体得していく必要があります。

 軸側と移動側は、利き手と支え手・利き足と軸足、スポーツ歴などの影響を受けます。さらには軸側と移動側が顕著で不調などが多い方は、感情の波を大きい可能性もあります。

 骨盤・背骨の歪みやコリなどは、この軸側と移動側の原理の影響を強く受けています。

 つまり動きの癖と力みが歪みやコリの原因ということは、

 軸側と移動側の特性=動きの癖・力み

 と言い換えることもできます。

 つまり、動きの癖や力みが強い方は、軸側と移動側の特性が顕著かつ許容範囲を超えている場合が多く、骨盤や背骨の歪みやコリ、関節の異常などを引き起こし、それがある一定線を越えると痛みやシビレなどが出ます。

 他力の治療などで、歪みやコリを治しても、この軸側・移動側の特性、つまり動きの癖と力みを治さないとまた繰り返すということです。

 軸側・移動側を自在にコントロールすることが至難の技ですが、健康を保つために、ニュートラルに近づける作業は必要となります。

 アスリートに至っては常に限りなくニュートラルなポジションを作り、さらには自在に軸・移動をコントロールできるようにならなくては一流にはなれないのかもしれません。

 情報提供:渋谷鍼灸理学治療室 体軸法 渋谷